はじめまして。小林依通子です。
稽古場では、こっこ、と呼ばれています。演出助手で、ささやかにお手伝いさせていただいています。
初夏公演の稽古が始まってからもうすぐ1ヶ月。すでに、すべての作品の稽古が始まりました。
今日は「時計屋の恋」の稽古の様子をお届けします。
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4月28日。夜からスタート。
時計屋メンバーは、ワークショップ参加者が多く、お互い初めましての方が多いのに、すでに打ち解けて、居心地のよい空気感。
そんな出演者のおひとり、田村元さんから、この日、ちょっと変わった蜜柑の差し入れが。
その名も、なつみ。
(時計屋の恋は、なつみ、という女性がキーなのです。)
なんて甘酸っぱい。まるで恋。
美味しくいただきました。
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稽古がスタート。どの作品でも、稽古は必ずアップから始まります。からだもこころも動かすと、緊張がほどけて、自然と集中力が高まっていきます。
普段から行っているアップのなかで、2.3人で1組になり、一曲の歌を一音ずつ歌い継いでいく、からす、と呼んでいるものがあります。
一音目を歌い出すリーダーに、声質・音量・音程・歌い方を合わせるのですが、これが結構、むずかしい。
役者さんそれぞれの個性、というか、素材というものが、よく分かります。
向きあって歌う組、顔を見あって歌う組、声に集中するために床をじっと見つめる組、横に並んで互いの声を聴きあう組。取り組み方、相手とのコミュニケーションの仕方もそれぞれです。
相手の声をよく聴くことって、実は、普段していないかも。声をひとつにすることって、相手との距離を、ぐっと縮められるのかも。それは演技をする上で、とっても大事なことかも。
青☆組が、和気あいあいとしている秘密も、もしかしたらここにあるのかも。
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ブレイクを入れたあと、いよいよ読みが始まります。
「時計屋の恋」は、ある小さな田舎町の、お彼岸の一日を描く群像劇。「待ち人来たらず」のくじを引いた人々を、そっと見つめる物語。(HPから引用。笑)…です。
時計屋を畳んだ男。その息子の嫁。ふたりが住む家に、集まるひとびと。それぞれ心になにかを宿している…
台本の最後まで読み進めるのは、今日が2回目。読んでは、返し、読んでは、返し。稽古は少しずつ進みます。
ときおり、小夏さんのディレクションが入る。
「ここは申し訳なさそうに」
「場を明るくしようと話題を変えるように」…
小夏さんのディレクションは、とても丁寧です。それにすぐ応える役者の皆さま。さすがです。(時には、稽古場がひっくり返るくらいの笑いがおきます。)
ディレクションが入ると、役の見え方が、一気に変わる。登場人物たちに彩りがうまれる。シーンに、はずみがついて、物語がわっと立ち上がってくる。
驚きです。
わたしは、今回の公演に向けてのワークショップオーディションに、1日だけ参加させていただきました。
そのときも、小夏さんのたった一言で、セリフの意味が変わって聞こえたり、関係性が急に怪しくみえてきたりして、すごくおもしろかったなあ。
時には、役者さんへのテーマも投げていく小夏さん。
「今回の公演では、こういう演技を、◯◯さんのテーマにしてみましょうか」
小夏さんが、役者さんひとりひとりを活かして、どの役もいきいきするように作品づくりをしていることが、よく分かります。
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「時計屋の恋」は、リーディングだけれど、相手との距離感、場の空間を意識して、稽古しています。
お芝居のような動きがない分、ことばから情景が浮かびあがりやすい。物語が、より深まる気がします。
想像する楽しみ。感じる楽しみ。
これからは、ここぞという時に立ち上がったり、歩いたり、走ったり、ミザンスをつけての稽古が始まります。
リーディングと侮るなかれ。
青☆組の「時計屋の恋」は、リーディングの枠を超えて、見応えあるものになっています。
〜からだで語り、ことばを奏でる、「観る」ドラマリーディング〜
みなさんへのお知らせの文章のなかの一文。まさにこの通り。
青☆組の稽古場は、作品は、ほんとうに豊かです。日々、からだで感じています。
どうぞ「時計屋の恋」を、お楽しみに…。
∞ 小林依通子